スタートレック3・ミスタースポックを探せ

『スタートレック3・ミスタースポックを探せ!』
ST3_etc


【総論】
スポックが死んじゃうなんて~!と嘆いたファンを安心させてあげるために作られた作品。(断定)
監督はスポック役のレナード・ニモイ。なんでも出演交渉の際に「監督もやらせるなら出る」と言ってみたら、ほんとにそうなったとか。スタジオ側は「いいかも!」と思ったそうだが、ニモイの書いた本を読むと、確かにこの人は監督向きだよなぁ..と思う。
物語の関係か、あるいは前作から監督が交代したためか、映画のタッチが少し冷たくなったようだ。クリンゴンが前面に出てきたせいもあるだろう。物語もさらにシビアに進んでいった。とはいえ、ファンとしては何気なくテープル上で愛でているトリブルが嬉しい。初めて画面に登場した宇宙ドック、最新鋭艦U.S.S.エクセルシオ(NX-2000)、探査艦U.S.S.グリソムなど、楽しい見せ場もいっぱい!だ。


【この作品のポイント】
☆誰もが言うことだけど、題名の「ミスタースポックをさがせ!」....って、スタッフに「監督さんはどこですか?」と聞けば済むことだったりする。第一、のっけから長々と喋ってる。(冒頭ナレーション)

☆スポックの棺が軟着陸した惑星ジェネシスの風景。ジャングルの奥地なのか、そよぐ風がジャングルの木々を揺らす、ちょっと大げさだけど生命の息吹を感じさせる、何とも良いシーンだ。そういえば、監督のニモイは次作「スタートレック4」でサンフランシスコとクジラを舞台にするけど、実は癒し系の映像を好むのかも?

☆惑星ジェネシスの地上からカメラがゆっくり引いていって、大気圏を抜け、宇宙に出て行くタイトルバックの映像、とてもいい感じ。なんというか、まさに生命の生まれ変わりを示唆しているよう。

☆エンタープライズが宇宙ドックに帰還するシーンは画面構成が見事。..けっこう大きいはずのエンタープライズが宇宙ドックの小さなゲートにスーッと入っていく。あれだけで宇宙ドックの巨大さを見事に表現していると思う。

☆傷ついたエンタープライズを包み込むように画面に入ってくる宇宙ドック。「お帰りなさい、エンタープライズ。」と管制塔の女性士官が声をかける。(DVDの字幕は「ご帰還ようこそ」と、事務的で残念。このシーンは日本語吹き替えが「吉」です。)
そして、内部のスポットライトに照らされる艦全体の傷跡を呆然と見つめる、展望サロンの人々。(元クルーのジャニス・ランドが心配そうな表情で見ていた。)
なんか暖かくて、いいなぁ...と、今でも繰り返し見たくなる名シーンだ。

☆スターシップの運用年数は約20年という設定。U.S.S.エンタープライズNCC-1701は訓練生用の練習船扱いになっていたが、遂に廃艦処分が決定。映画的には、前々作で改修して生まれ変わったばかりだったのにね...
操作パネルを見ると、まだ改修前のプログラムが残っている(パネル上の船の形がTV版のままだ)しなあ。..

☆それにしてもスコッティ、「2週間」で済む修理を「8週間」と言うなんて、さばを読むにも程があります。(^^;)

☆カークがスールーからモロー提督との交渉結果を聞かれて言った言葉。「返事か?NOだ。どうせ行くがね。」...カッコいい。ついマネして実生活で使いたくなる危険な言葉だ。というか、何回か使った記憶が...。(あわわ)
やはり艦隊の命令を破ってこそ、エンタープライズというものだ。

☆スポックを救うために宇宙の果てに行く必要を熱く説くカーク。冷たく却下するモロー提督。司令部はだめだ、俺たちだけで行くんだ! 俺たちのエンタープライズを死なせてはいけない!..というわけで、かつて地球を救った廃艦処分のエンタープライズに乗り込んで宇宙ドックを突破するカーク一行。すぐさま追跡を開始する最新鋭艦エクセルシオ!  ...ちょっと「ヤマト2」っぽく書いてみた。(笑)

☆そのU.S.S.エクセルシオだけど、後にU.S.S.エクセルシオールという呼び名が定着した。でも公開時はみんなエクセルシオと書いていたぞ。(^^;)しかも劇場公開時のパンフレットには「ギャラクシークラス」と書かれていた。(!)

☆初めて画面に出てきた時は、うわっ! やなデザインだなぁ..と思ったことを告白しておきます。m(_ _)m まずラインが美しくないと思った。第一船体と第二船体を繋ぐ部分(ドーサルネック)が太いし、そこから第二船体に向かうシルエットが単調で美しくない。"空飛ぶ便器"とはよく言ったものだ。それに、オモチャっぽいパーツを使い過ぎ。
ただ、言いたいことは解る。エクセルシオは超ワープ(トランスファー・ワープドライブ)実験のために造られた船なので、負荷に耐えられるように各部が強化されているわけだ。

☆もっとも、その後のシーンで(エクセルシオ系統のテイストを持った)U.S.S.グリソムが登場して、惑星連邦に於けるスターシップデザインの世代交代を痛感させられた。
つまり、この映画ではスポックの"死→生"を追うと同時に、スターシップの"若→老"を表現しているわけか。

☆クリンゴンって、「秘宝」とか「偉大なる力」とか、言うことがいちいちエキゾチックで良いですな。

☆息子を殺されたと聞いて、キャプテンズチェアから崩れ落ちるカーク提督。僕にしてみれば、それまで以上にカークというキャラクターを好きになった瞬間だった。
アメリカのヒーローは弱みを見せないのが普通なので、かなり異例だそうだ。監督ニモイはシャトナーに「どう演技するか、君の判断に委ねたい。個人的には思い切りやっていいと思う。」と告げたそうだ。演じたシャトナーと監督ニモイに拍手。

☆それにしても、まさかエンタープライズを本当に吹っ飛ばすなんて...。絶対何かのブラフだと思って観ていたのに、艦籍番号NCC-1701がぶつぶつと焦げていって、やがて...。劇場で呆然とした思い出がある。(観たファンは全員同じ思いだったろう。)
"恋人"エンタープライズを失う決意をしたカークの意志の強さに身震いし、次の瞬間に『どうやって帰るんだろう?』と妙に現実的な心配をした。(^^;)

☆本来は当たり前のことだけど、自分達はちゃんと脱出するのがアメリカ映画的で良い。これが「ヤマト」だったら、乗組員ごと突っ込んで映画が終わっているところだ。...

☆惑星ジェネシスで初めてのポンファー(ヴァルカン人を7年に一度襲う"感情"の)を迎える再生スポック。再生した"恩師"を導くサービック。想像の余地がたくさんあるシチュエーションで、このあたりのエピソードだけでドラマが1つ描けそうだ。
サービック役は前作のカースティ・アレイからロビン・カーティスに交代した。前作よりずいぶん優しくなっちゃったなあと思っていたけど、このシーンをに関してはロビン・カーティスで良かったたかも。

☆眠るスポックに「二度と私の前から消えないでくれ」と語りかけるマッコイ。TVシリーズからの喧嘩友達がふと見せた心の一面。この時のスポックはまだカトラが戻っていないわけだけど、あとでちゃんと憶えていただろうか。


【印象的なセリフ】
カーク 「こんなことをしてよかったのか..」
マッコイ「こうと決めれば必ずやり遂げる人だ。目前の死を生きるためのチャンスに変えたんだ。」

スポック「なぜ私を?」
カーク 「少数の必要が多数の必要に勝ったからだ。」


【今回の「頑張れ!チェコフ」】
ウフーラの代役(通信担当)でよく頑張りました。


【今回のU.S.S.エンタープライズ】
前作で受けたダメージを修理していない上に、半分自動操縦でようやく飛んでいる状態。そのせいで、防御シールドを張れない。


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